書評

【書評】身近にうつ病の人がいる方に読んで欲しい!「うつ病九段」先崎学

こんにちは!癒し師きゅうらくです!

 

今回の書評は

「うつ病九段」先崎学

 

きゅうらくは小学校1年生の頃に将棋を覚えて楽しんでいました。

今とは違って、将棋の棋士は職業なんだけど、うさんくさくて、でも将棋をしている人にとっては憧れで。

すごい人、けれど怪しい・・・みたいな表現がぴったりな存在でした

そんな棋士である、先崎学さん。

彼が「うつ病」であったことを告白して、当時(と言っても、書かれたときはうつ病の回復期で復帰直前)のことを語られている貴重な話です。

 

この本は、うつ病の方、さらに言えば「身近にうつ病の方がいる人」にこそ読んで欲しい!そんな本です。

Contents

先崎学さんってどんな人?

先崎学さんは「将棋棋士」です。

いわゆる、羽生世代と呼ばれる中の一人で、タイトルこそありませんが世代の中で最も早い奨励会(プロ養成所みたいなところ)入りをしています。17歳でプロ(四段)となりトップ棋士として走っていました。

将棋以外でも才能を発揮していて、特にエッセイや将棋の本を数多く書かれています。(「世界は右に回るー将棋指しの優雅な日々」(フフフの歩)の面白さは異常です)

師匠の故・米長邦雄永世棋聖のもとに入門した時に「これで自分の門下からタイトル独占する者が現れる」のようなことを語っていたというくらいに、期待が大きかったらしいし、入門〜新進気鋭な頃は「天才先崎」なんてニックネームがあったくらい!

麻雀などのギャンブルでも著名であったり、活動は多岐に渡ります。

勝負事のことも多く書いている本も多数執筆。非常に人間臭くて、面白い、あえていうなら一昔前の棋士。そんなイメージです。

近年ではマンガ「3月のライオン(羽海野チカ)」の監修者としても有名ですよね!

 

・・・はい、実は、ぼく「先崎ファン」なのです(笑)

うつ病九段で書かれていること

2017年8月以降、順位戦(将棋のリーグ戦で棋士にとってすごく大事なもの)がずっと不戦敗だったのが不思議でした。

当初は何も発表されていなかったのですが、のちに病気で入院していたと。「2018年3月末まで休養する」と発表されました。

「うつ病九段」の話は、この休養期間中での話が書かれています。

 

先崎九段のお兄さんは精神科医だそうで、そのつながりで「うつ病」が発覚・入院になったそうです。

うつ病である先崎学さんが、どのように考えていて、どんな行動で、周りをどういう風に見ていて、初期から辛い時期・回復していくにあたって・・・かなり赤裸々に、また淡々と書かれています。

長らく先崎ファンとして数多くの彼の著作を読んできたものとしては、けっこう意外な感じのする語り口です。(感情の表し方とか、先崎学っぽいとこもあって嬉しいのですが(笑))

この本を書くにあたって、お兄さんに、

「学が経験したことをそのまま書けばいい、本物のうつ病のことを書いた本というのは実は少ないんだ。うつっぽい、とか軽いうつの人が書いたものは多い。でも本物のうつ病というのは、全く違うものなんだ。ごちゃごちゃになっている。うつ病は辛い病気だが死ななければ必ず治るんだ(引用:本文p177より)」

この通り、従来のうつっぽい人が書いた本とは少しおもむきが違うように思います。

「ライン一本でキャンセルするだけなのに、その決断がつかない。十分や二十分、ひどい時には一時間以上もそれだけのことで悩み続ける(引用:本文p10より)」

 

「うつは孤独である。誰も苦しさをわかってくれない。私には家族がいて、専門家の兄がいるという最強の布陣だったが、それでも常に孤独だった。(引用:本文p118より)」

 

「うつ病が最悪の時期の人間は、他人に感謝できない。他の人は知らないが、すくなくとも私はそうだった。(引用:本文p125より)」

 

挙げだすとキリがないのですが、よく見られるような、

「うつ病の方には〜してはいけません」

のような優しい文章は載っていない。もちろん、先崎さんの話で他の人はまた違うように思うのかもしれないですが、ここまで心情を・考えていたことを書いてしまって良いのか?と感じるくらいでした。

でも、ここまでしっかりと、そして淡々と書かれているのに嫌な思いをせずに読めるのは、さすが「先崎学」だとも思えるのです。

うつ病九段から参考になること

この「うつ病九段」という本には、

よくありがちな、うつ病の方にはこうしましょう!的なことはほぼ書かれていません。

むしろ、うつ病の方が「どう感じて・どう考えているか」が書かれた本なわけです。

そこから学ぶべきことは、表面上の言葉のやり取りよりも、何を重要視するべきか、ということ。

自分がうつ病の方と向き合った時に、何ができるか?どうしたら良いのか?どんな状態なのか?そんなことを考えつつ、より良い付き合い方を、それぞれ探していけたら良い。そんなことを考えさせてくれる本です。

 

うつ病という病気に分類されますが、人それぞれ。

そんな中で、相手にあった選択をできるか・しようとするか。そういうことが大事になってくると思うのです。

 

最後に、何気なく書かれている一言ですが

「もっとも嬉しいのは、みんな待ってますという一言だった。うつの人の見舞いに行くときはこの一言で充分である(引用:本文p40より)」

こういうメッセージ、嬉しいです。

まとめ

「うつ病九段」

棋士:先崎学さんによる、うつ病のスタートから回復期がつづられた、ある意味・手記です。

将棋界のことを知っている方は、あの期間にこんなことが起きていたのか・・・と思いつつ、うつ病について知ることができる本です。

将棋界を知らない人でも、うつ病について知ることができるのと、棋士のような人がどう考えているのか・棋士の世界が少しわかる本です。

ぜひ、手にとって読んで欲しいですね。

何かの参考には必ずなる一冊です。